管楽器には、フルート、サックス、トランペット等、いろいろな種類がありますが、基本的には管の中で音の振動を共鳴させて振動を増幅し、音を出しているというものです。ここでは管楽器全般がどのように音を作っているかを解説し、それぞれの楽器で異なる点にも着目して紹介していきます。
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管の中の共鳴
管楽器はどれも管の中の空気を振動させて音を作っています。管の中の空気の振動は管の両端で反射して、その中で共鳴する振動数の音が増幅されるという仕組みです。下の図のように管の中の空気の振動は空気中を伝搬して、管の両端で反射されます。なぜ反射するのかは後述するとして、ここでは管の中でこの反射した振動同士が共振して大きな音となるという仕組みです。

こちらが管の断面図で、何かで中の空気を振動させたとします。空気の振動は管の中を移動し、反対側の端で反射されます。管が閉じていても開いていても反射します。多くの管楽器は片側が閉じている構造で閉口管なのですが、フルートやリコーダーは両端が開いている開口管になります。
閉口管と開口管の反射
管の端が閉じている場合と、開いている場合では反射の性質が異なります。物理用語としては、閉じている場合は固定端反射、開いている場合は自由端反射となります。なぜ反射するのかをまず図で示していきたいと思います。
閉口管の反射
音の振動は空気の圧力の変化です。ある地点の空気の圧力を変化させると、その変化が周囲にも伝達していきます。下の図は、閉口管の中に空気の圧力の変化を入れた場合のイメージとなります。濃い部分が圧力の高い部分と思ってください。この圧力の変化は閉口管の閉じた端まで伝わり、そこで反射します。圧力の高い部分がそのまま返ってきます。圧力変動の波として考えても、高い部分が高いまま反射されますので、これを固定端反射と言います。これはイメージしやすいと思います。

開口管の反射
次に開いている方の端の反射ですが、これは閉じている方とは反射の性質が変わり、位相が反転します。つまり圧力の高い部分が低い部分に変わって反射してきます。これを自由端反射といいますが、イメージが難しいと思います。下の図に開いている方の端の反射のイメージを示します。

圧力の高い部分が開いている端に到達すると、そこで圧力のエネルギーが一気に外に放出されます。その反動でその地点の圧力は一気に下がります。この圧力が下がる変動も空気中を伝搬しますので、圧力の低い部分が反射波として返ってきます。これが開いている端の反射の性質で位相が反転する自由端反射となります。
定在波
定在波とは、進行波と反射波が重なってあたかもそこに波が止まって動いているかのような振動をする現象です。管の中は波の方向がひとつの軸となるため定在波が生成されやすいです。
下の図のように管の中で進行波と反射波が混ざり合うイメージとなります。
反射波は進行波が管の端で反射されたものなので、進行波と同じ周波数(波長)の波で逆方向の波となります。この2つの波が重なり合うことで定在波が生じます。

この定在波ですが、どんな周波数の波でも生じるわけではありません。反射は管の端で1回だけ行われるのではなく、その反射波が逆サイドでさらに反射され、何度も減衰しながら反射します。その反射された波が進行波とぴったり位相が合う周波数、また何回か反射した波同士の位相がぴったり合う周波数の波だけ定在波が生じるわけです。つまり単に2つの波が重なっているだけでなく、何回も反射した波全てが強めあって大きな定在波ができ、その音が人に聞こえるレベルまで増幅できるという仕組みです。
では、どのような周波数だと反射波同士の位相がぴったり合うのかですが、波の波長が管の長さとある条件で合っている場合のみ、定在波が生じます。波長とは周波数と関係があり、音速が秒速約340mとすると、例えばチューニング等に使われるラの周波数は440Hzなので、340m/440で、0.75mが波長となります。75cmです。1秒間に440回振動しながら340m進むため、1回の振動で75cm進んでいるということになり、これが波長となります。
この波長が管の長さと合うと定在波が生じて音がなります。この条件は開口管と閉口管で変わってきます。
開口管の場合は両端が開口していて自由端反射のため、波長の1/2が管の長さとなっている時に定在波が生じます。また、1/2波長の整数倍の長さが管の長さと合っている時も定在波が生じます。
一方、閉口管の場合は片側が閉じているため、片側が固定端反射、もう片側が自由端反射となります。この場合、波長の1/4が管の長さとなっている時に定在波が生じます。また、1/4波長の奇数倍の長さが管の長さと合っている場合も定在波が生じます。

どちらも、最も短い波長(最も低い周波数)で定在波が起こる振動を基本振動とし、この時の周波数をその管の固有振動数と言ったりもします。楽器には管に穴があいていてそれを指で閉じたり開けたりして管の実効長をコントロールでき、共鳴する音の波長をコントロールできます。これで音程が変わるという仕組みです。また、高い音などは基本振動の2倍、3倍の音なども使って音域を広く出せるようにもなっています。
では、どの楽器が開口管でどの楽器が閉口管かというと、フルートとリコーダーが開口管楽器で、それ以外の管楽器は閉口管となります。これは口で息を吹き込む側がリードやマウスピースなどの場合、口で塞いでいるためそこは閉口となります。フルートとリコーダーはエアリードといって、息を吹き込む側が開いているため開口管となります。(リコーダーは口で塞いでるように感じますが、実際に音を作っているのはラビュームという穴が開いているところで、ここが開いているため開口管となります。)

よくサックスは開口管楽器と説明されている場合がありますが、これはサックスが奇数倍音だけでなく整数倍の倍音が出せることが理由です。倍音の性質から開口管楽器と呼ばれている楽器もいろいろありますが、管の端が空いてるか閉じてるかでいえば、サックスは閉口管楽器です。ではなぜ、閉口管楽器のサックスが偶数倍音も出せるのかというと、そこは次に説明する円錐管も関係してきます。
円筒管と円錐管
管楽器は管の太さが一定の円筒管と少しずつ広がっていく円錐管があります。わかりやすいのは円筒管です。これまで説明してきた原理は全て円筒管を前提としていています。円錐管の楽器としてはサックスがあり、同じ木管リード楽器のクラリネットは円筒管です。先ほど少し触れましたが、サックスが偶数倍音も出せるというのはこの円筒管と円錐管の違いも関係しております。
円錐管の反射の原理は円筒管に比べて非常に複雑になっております。この反射波を計算することも難しいため、複数の円筒管をつなげて少しずつ拡げていく連結円筒管で近似することもあります。

このような連結円筒管を考えると管が拡がるポイントを開口管の端と考えることができます。つまり、いろんな場所で少なからず反射が起きるということになります。管の全長の半分の地点で反射する波もあります。そのため、管全体としては閉口管でも、管の真ん中で反射する波もあるため2倍音の成分も生成されます。円錐間は円筒管に比べていろんな倍音がでやすくなっているということになります。また、サックスにはオクターブキーというものがあり、2倍音を出しやすくし、3倍音を出しづらくして、オクターブ上の音をだしやすくするメカニズムもあります。
基本的には閉口管は奇数倍音のみ共鳴するのですが、円錐形やその他楽器の構造などによっていろんな倍音がでるようになります。その結果、サックスは偶数倍音が普通に出せるため、開口管楽器の特性を持っております。
ハーモニクス
ここまで管楽器の音が鳴る仕組みは説明しましたが、最後にこれをふまえてハーモニクスの原理も説明します。原理がわかっていると練習や演奏にも役に立つかもしれません。
これは「フルートの音がなる仕組み」でも説明していますが、管楽器は同じ運指でも高い音などを出せたりします。フルートの場合で説明します。
まず、管体には音孔がたくさんあり、それを指で押さえたり離したりすることで、管の長さを調節していろんな音程をだせるようにしています。つまり運指によって共鳴する波長が決まるということです。
この波長に相応する周波数の音が鳴ります。基本的には管の実効長が1/2波長になる周波数の音が鳴ります。
同じ運指のまま、息のスピードを早くしていくと、オクターブ高い音がでるようになります。これは基本振動の2倍の周波数となっています。なぜこうなるかというと、定在波のところで説明したように、1/2波長が2個分の波長の2倍振動の音も定在波が生じるからで、息のスピードを早くすると空気の振動も早くなり2倍振動の方が鳴りやすくなるためです。

この原理を利用した練習がハーモニクスの練習で、同じ運指のまま、息のスピードを上げていき、2倍振動、3倍振動の音を出せるようにしていきます。こうすることによって、息のスピードをコントロールする能力が向上していきます。

実際にオクターブ高い音を演奏する場合は、管の実効長のちょうど真ん中あたりの音孔を開けます。こうすることによって、この地点でも自由端反射を置きやすくし、2倍振動を起こしやすくします。オクターブ高い音は、上の図のように定在波の腹の部分の音孔を開けるような運指になっていると思います。
ハーモニクスの練習をしていれば、息のコントロールだけでオクターブ高い音を出せるようになっているため、運指で真ん中を開ければ、より簡単にオクターブ高い音が出せるというわけです。
なのでこういった原理を理解しつつ、ハーモニクスの練習の重要性までわかると練習のモチベーション向上につながるかもしれません。
以上、管楽器の音が鳴る仕組みでした。